入江亜季サイン会に寄せて

 本日『群青学舎』3巻の発売を記念したサイン会がとらのあな三宮店で開催されました。

 前に云いました通り電話予約が上手くいっているのか非常に心配な状態でしたが、店頭で予約している旨伝えると記録と照会してくれて無事整理券をゲット。この時点で1時だったので予定の時間まで大分間があり腹も減っていたので中華街に移動。近いんですね、三宮からほぼ連続したエリアのような格好になっているようです。

 整理券をもらってから店内を一通り見て回ったときにはサイン会をするようなスペースが見当たらなかったのでどうするのかと思っていたら、店の奥の従業員スペースのような所が会場で、連絡通路で我々は待っていて順次部屋に入るという方式でした。
 よく考えるとあの肌色の多い空間で(って云ってるイミ判りますよね、未成年はダメよ)入江亜季というのもなんとも妙な組み合わせ(と云うより端的にイヤ)ですから、オープンスペースでは出来ませんよね。(正直とらでサイン会と聞いた時はほんとか!?と思いました)

 予定の時刻にあわせて15時前に会場(正確には待機スペース)へ行ってみると、第1部がまだ終わってないとのこと。40分くらい遅れということなので適当にヒマを潰して再度会場へ(16時ごろ)。今度は整理番号の紙切れをくれて、この番号(41)だったら17時過ぎくらいになりそうと云われたので、再びその場を離れる。空き時間を有効に活用すべく夏服を物色し、パンツのすそ上げを頼んで三度会場へ。どうせまだ待つだろうからと思い、本屋にも寄って準備万端。列の一番後ろに並び読書。足腰に来るけど我慢。

 私より後に1人やってきて最終的には最後から2番目でしたが、順番が回ってきたのは19時過ぎでした。

 勿論待つ方もしんどいっちゃしんどいのですが、多分一番しんどかったのは先生だと思います。1人1人ものすごく丁寧に描いてくれていて、お隣のアシスタント(実はこの人がただのアシスタントではないのだが)の人とで応答しながらの5時間(休憩とかはさんでたのかな?)ですから。本当にお疲れ様です。

 しかし、いざ本人を前にしてなんか喋れって云われてもとっさには出てこないもんですよ。前に細田守サイン会に行った時もしょーもないことしか云いませんでしたし。

 という訳で改めてこの場を借りて熱い(?)思いをぶつけたいと思います。(まあご本人の目に触れることは無いでしょうが)


 やはり多かったというお話でしたが、私もご多分に漏れずジャケ買いでした。『群青学舎』の1巻と『コダマの谷』が2冊同時に出たときにセットで買いました。で中身もドンピシャですよ。やられましたね。

 『コダマの谷』あとがきでも述べられるとおり「ヨーロッパ風イメージ」というのがミソです。このイメージとしてのヨーロッパというのは少女マンガ読みにとっては恐らく最強クラスの伝家の宝刀です。勝手に一般化してよいものかどうかとも思いますが、一種の少女マンガ的原風景というか、ある種のユートピアみたいなものとして「ヨーロッパ風イメージ」というものが存在していて、ギムナジウムとかいう単語にビビッと体が反応してしまうのもその所為なのかもしれません。(これが同じ寮でも「緑林寮」だと大分風向きというかベクトルが変わってくるような気が個人的にはします。別に悪い意味ではなく)

 ただ、この種の「ヨーロッパ風イメージ」をきちんと形にするというのは案外難しくて誰でもが出来る仕事ではない訳です。知識とか教養とかでなく、恐らくセンスの問題として、イメージとしてのヨーロッパの空気を描出できる才能が問われます。リアリティとファンタジーの微妙なバランスの上にのみ成立するものですから、どちらかが過剰では壊れてしまう。また多くの人がそれぞれにイメージとしてのヨーロッパを構成しているから、それらとの共役可能性というか通分可能性との兼ね合いもあります。この意味でハマった時の効果も大きいけれど、それなりのリスクを負っているということになります。

 そこを上手く攻めてくる(或いは攻められる)入江亜季の手腕というのは、単なる器用さとかいったレベルではなく、少女マンガの新たな地平を開拓するものであると云えます。(一般的にそう云えるかは兎も角としても、個人的にはそのくらいすごいと思っている)


 『コダマの谷』であればウーナ姫、『群青学舎』1巻であればアルベルティーナのようなイメージとしてのヨーロッパにおける正統派美人をあれだけの色気をもって描ききる力というのも勿論大事なポイントではありますが、彼女らの生活を取り囲む調度の数々の正しい選択という力も無視できません。

 また上記のような正統派美人もさることながら、『コダマの谷』のマージのようなかわいさも光ります。あのかわいさは尋常じゃない!入江作品で好きなキャラを挙げろと云われればティナとマージが同率一位と答えます。

 とりあえずこんなこと(マージかわいいとか)ばっかり云ってても仕方ないので止めておきますが、入江作品についてはまた改めて特集したいですね。


 今回のサイン会は入江先生の真摯なお人柄に触れることが出来て喜ばしい限りです。一生ついていきます!(ストーカーとかじゃなくてね、勿論)


 追伸:『エマ』購入しました。