今市子の場合

 ここんとこ、津田雅美のコマ割りについて見てきましたが、今回はある意味で津田の対極に位置すると云える今市子について考えて見たいと思います。

 実はこの二人商業誌デビューは93年で同じです。今市子は生年が明らかになっていないので、はっきりしたことは判りませんが、ほぼ同年代と考えて差し支えないと思います。(という訳で今市子も71年組の仲間に入れることにします)

 今市子はかつて、萩尾望都の「グレンスミスの日記」が70ページくらいだと思ってたら実は24ページしかなくて、自分にはそれだけの内容を24ページに収めることは出来ないから、24ページという数が怖い、というようなことをコメントしていたようです。(参考:TINAMIX 青少年のための少女マンガ入門(3)今市子 http://www.tinami.com/x/girlscomic/ima-ichiko/page2.html

 このコメントからも判るように、今市子は出来るだけ多くの内容を詰めこもうとしますし、コマ割りも割と複雑で断ち切りが多い(のでページ数の指定がめんどくさい)。

 「百鬼夜行抄」から「雨夜の衝立」を例に以前と同様の作業を行ってみます。(このエピソードを選んだのは別に深い理由はなくて、ネムキの06年9月号増刊の今市子特集で描き下ろしの後一番初めに載っているやつでページ数も比較するのにちょうどいいからです)

 31ページで187コマ、よって大体ページ6コマの計算になります(数え間違いの可能性はありますが、おおよそこの位ということでご理解ください)。当然のことながら、ページまたぎはありません(というかこのコマ密度では物理的に無理)。そして驚くべきはページ数が印刷されているページは一切ないこと、即ち全ページ断ち切りです。さらに、基本的にコマは長方形ですが、コマ同士を重ねたり、斜めに配置したり、多少変則的なコマ割りを行っています。

 この話は夜の話ということもあるのですが、全体的に画面が黒い感じがします。そして、読むのに時間がかかります。台詞も多いです。


 今回は単純にコマ数(コマ割り)の比較でしたが、こうも違うとは…。