見逃した

 よりによってオトメン最終話を見逃すという失態です。いらん仕事の所為で外に出ていたことが悔やまれます。

 さて、今回はいつもとは違って少しまじめな話です。といってもあまりまじめに聞こえないのが不思議な「ホモ・サケル」(ま、不思議でも何でもありませんが)

 ちょっと前からなにかと話題のジョルジョ・アガンベンですが、彼の『ホモ・サケル』。和訳がなんだかよくわからんことになってるというのはさておき、今回はサブタイトルタイトルの話です。

 Homo Sacer: Sovereign Power and Bare Life

 Homo sacer. Il potere sovrano e la nuda vita

 上が英語版、下がイタリア語です。ちなみにフランス語だとHomo sacer I. Le pouvoir souverain et la vie nue、ドイツ語だと Homo Sacer. Die souveräne Macht und das nackte Lebenとなります。

 で、何が問題かと云うと、冠詞より正確には定冠詞の有無が問題です。

 英語とイタリア語を比べて、定冠詞がなくなってるのがものすごく気になる訳です。(フランス語もドイツ語も定冠詞っぽいのがついてますよね。知らないのではっきり定冠詞だとは云えないですが)

 このサブタイをどのように翻訳するかはさておき、最も単純な直訳としては「至高の力と裸の生」といった具合になるかと思います。potereを単に「力」とするか「権力」と踏み込んで訳すかはこの際あまり問題ではないでしょう。sovranoも「最高の」か「至高の」かはとりあえずどうでもいい。しかし、これに定冠詞で限定が入るかどうかは結構重要な問題のような気がするのです。

 たしかに英語ではthe godとは云わないし、そういう意味でtheが抜けてるのかもしれないのだけれど、わざわざ定冠詞をつけて神の力を暗に想定させつつ「至高の力」と云っているところをまったく無視してよいものかどうかはかなり疑問です。逆に英語版の訳者が何か考えてやってるとしか思えない(うっかりミスとかそんないい加減な話であるはずがない)ので、どういう理由でそうなったのかが気になります。

 最後に、どうでもいいことですが、こういうときくらいしかイタリア語が役に立たない、もっと云えばこれだって役に立っているといえるレベルの話ではない、というのが非常に悲しいです。